先輩からのメッセージ

NICの1年間は本当に楽しかった。人生で一番楽しかった。 イギリスよりも楽しかったです(笑)。

PROFILE

小林豊明さん

NIC 第18期生 大阪桐蔭高校卒
バース大学薬学部(学部3年+大学院1年=4年制コース)

ついていくのがやっと、の薬学部の授業

街全体が世界遺産として登録されているイギリスで最も美しい都市のひとつ、バースで、豊明さんは薬学を学んでいる。NIC生の中で、イギリスの大学で薬学を専攻するのは豊明さんが初めて。もちろんバース大学薬学部でもただ一人の日本人学生である。一クラス100人のLectureと、一クラス3人のTutorial、そして一クラス15人のLaboで構成される薬学部の授業は、「ついていくのがやっと」だという。

「留学生はあともう一人韓国人だけ。香港からの留学生は10名くらいいますが、彼らは小さいときからすべて英語で勉強しているので、イギリス人と一緒。その韓国人と協力して、何とかクラスについていってます(笑)。」と関西弁で、京都人らしく謙虚に話す。

もともと動物学を専攻予定だったが、ファンデーションで学んでいるときに、世界中でSARSが流行し、それがきっかけでワクチンに興味をもち薬学に変えた。
「授業の後は、毎日最低7時間の自主勉強。それでも時間が足らない(笑)。でも土日は勉強しないと決めているので、友達と遊んで気分転換はできてます。」

仲間同士でサッカークラブをつくり、週末は『ワールドカップ』を開催しているという。
「イングランド、ロシア、香港、アフリカ連合、アラブ連合、そして日本の6カ国のリーグ戦です。日本代表は35歳の大学院生も含め男子9名、女子2名のチームで交代選手がいない(笑)。」

バースに来た当初は、公式のラグビー部に入部した。もちろん初心者である。
「でも最初の2週間の練習で救急車が3回来ました。チームメイトは身長2mクラスがゴロゴロ。首を怪我して未だに松葉杖の人もいて、自分自身もタックルされるたびに頭が真っ白になって星がたくさん目の前に飛んでいて・・・。このままだと命がもたないと思って、すぐに退部しました(笑)。」
日本代表がイングランド代表に勝てない理由もなんとなくわかる。

人生で一番楽しかったNIC

高校時代は可もなく不可もなく、普通の生徒だったという。
「大阪桐蔭は、スポーツで有名ですが、実はスポーツクラスと普通科は分かれていて、普通科は部活は週1~2回しかないんです。特に打ち込めるものもなかったので、平凡な高校生活でした。」

留学しようと思ったきっかけは、高校2年生の時に行ったイギリス短期留学(個人旅行)。夏休みだけの短い間だったが、将来の進路等について悩む高校2年の頃の私には大きな刺激となった。
「高校3年で進路を決める際に、周りの友人たちが、本当に自分がやりたいことを勉強するために大学に入るのではなく、自分の偏差値がこのくらいだからここぐらいの大学、この学部といった状況に憤りを感じたんです。また、ある時、友人の誘いで家の近くにある関西でも1位2位を争う私立大学の授業を見学しにいくことにしたんですが、そこでは授業だというのに携帯を触ったり、菓子を食べたり雑談する学生たちを見て・・・愕然としました。」

そして出会ったNIC。、「NICの1年間は本当に楽しかった。人生で一番楽しかった。イギリスよりも楽しかったです(笑)。NICで出会った友達は最高。みんな基本的に変人で、個性的で、互いの夢を理解しあっていました。日本の大学に行ってたら、自分の性格上、たぶんダメ人間になってたでしょうね。」

NIC時代の仲間とは今でも連絡をとっている。「今はSkypeがあるので、アメリカにいる仲間とも顔を見て話せますし、同じイギリスで学ぶ仲間とは、長期休暇の時に一緒にヨーロッパを旅行したりもしています。」

NIC修了後はカンタベリーでファンデーションを履修した。ファンデーションの最終試験で化学A、数学Aをとったが、生物でまさかのEをとる。「本当に苦労して一生懸命やったので、ショックでしたが、すぐに気を取り直してがんばりました。」その結果、二ヶ月後の追試で見事生物でBをとった。
「イギリスには薬学で有名な大学がいくつかあって、ロンドン大学のKings CollegeやSchool of Pharmacyを希望していたのですが、アジア人はあまりとっていないということで、ファンデーションの時の先生がバースを勧めてくれたんです。」

バースを含めて5校Applyし、その後、面接に行って合否が決まるのだが、「他の大学よりも面接官の印象がよかった」ことで、全大学に合格したあとも、自らバースを選択した。

日本の良さを伝えていきたい

豊明さんは、両親共に公務員という家庭で育った。比較的保守的な考えをもつ両親、特に父親は、今でも、日本の大学に行くことを望んでいるという。
「でもなんやかんやいっても、こうして理解してくれてて、授業料も出してくれているので、両親にはホンマに感謝してます。」

イギリスでは、4年間のカリキュラムを終えたら1年間の実習、そして薬剤師の試験を受けて免許がもらえる。「卒業後は何年かこっちで働いて、その後は、香港人の仲間と一緒に薬の輸出入の会社をつくる計画をしています。日本でも薬剤師の免許がないと、薬の輸入ができないということなので。」

イギリスに来て変わったことは?という問いには、「パーソナリティ(性格)ですね。高校までは、本当にせまい価値観の中で生きていましたが、いろんな人と出会って、人脈を広げて、価値観が広がって・・・。今はこうやっていろんな人がいる中で多様性を実感できる。世界は広いんだということが体で理解できます。」

NICの入試の面接で『日本の良さを知りたい』と言ったという豊明さん。
「今は本当に日本の”良さ”がわかり、自分の出身が日本だということを誇りに思います。もっともっとこれから日本の良さをいろんな人に伝えていきたいと思っています。」