先輩からのメッセージ

大切なのは「本当の心」。

PROFILE

近藤ゆきさん

NIC 第18期生 愛知県立松蔭高校出身
国立ハダースフィールド大学 演劇学科(副専攻:音楽科) 2010年6月卒業 University of Huddersfield BA in Drama with Music

日本からも取材に来た、知られざる「名門大学」

近藤さんは、現在マンチェスターから電車で30分のところにあるハダースフィールド大学で演劇と音楽(作曲)の勉強をしている。
「この大学では、演技と理論、そしてWorkshop Leading という、演劇をプロデュースすることを学んでいます。最終的には舞台演出の仕事をしたいのですが、若いうちは、演技の仕事もやっていこうと考えています。」

ハダースフィールド大学の芸術学部は、近年特に評価がうなぎのぼりだという。「特にContemporary Musicの作曲科が有名で、日本からもNHKが取材に来たこともあります。」

そういう近藤さんは、実は高校時代は獣医を目指していたという。
「高校1年生までは岐阜大学の獣医科を目指していたのですが、高2の時に演劇部に入ったことがきっかけで、本格的に演技の勉強をしたいと思ったんです。」

高校時代は声優の仕事もしていた。ナレーションやコマーシャル、ラジオの仕事も経験した。
「小さいときからピアノをやっていて、演劇と音楽の両方をやれる大学を探していたんです。」
希望の大学が見つからず、いろいろ迷っていたときに、偶然NICを知った。
「NICにRADA(王立演劇大学)と提携したプログラムがあることを知って。。。海外なら演劇と音楽の両方を勉強できると思ってNICを受験することに決めました。」

ゴールを明確にすればやれる。

NICでは、2学期と3学期にオールAをとった。「人生で一番勉強した時期でした(笑)。1年間でやれることを全部やろうと思いました。奨学金も欲しかったし、なによりもゴールが明確だったから。。。本当に頑張った1年でした。」

NIC修了後に進んだケンブリッジでのドラマファンデーションでも、ハダースフィールドに来てからもあのときほど頑張っていると言えるかは疑問だという。NICにいた時のように3日間連続で徹夜することもない。

「なんか、今は70%の力でやっている感じですかねえ。100%やると落ち込む時期も出てくるので、気持ちの上下も激しくなるから。。。」

しかし、ゆきさん自身、70%の努力ではいざというときに100%の力を発揮できないことは知っている。
「当時は努力しているつもりはなくても、過去を振り返ると、あの時頑張ったから今があると思えるんですよね。」
ケンブリッジにいた時も、演技の発音を良くしたくて、毎晩新聞の朗読をした。また、ABRSM(王立音楽大学協会)認定のピアノ試験 で最高レベル「Grade 8」にも合格し、今では、ピアノの個人レッスンの、先生のアルバイトまでやるようになった。演技に役立つのではないかと思って始めたカンフーも、来月には黒帯への昇段試験を受ける。

「舞台の発表の時にも、先生からピアノの演奏を頼まれたり、大学のオーケストラでは指揮者もやることができました。ゴールを明確にすれば、100%、120%の努力は自然とできるんですよね。」

消えなかったコンプレックス

多くの人が想像するとおり、英語で演技を勉強するというのは、英語を母国語としていない人にはとても大変なことである。また、シェイクスピアには、アジア人は登場しない。
「ハダースフィールドに来てから、ずっと英語にはコンプレックスを感じていました。」
そのコンプレックスがなくなってきたのも、イギリスに来て3年経ってからだという。

「演劇文化理論の授業の時に、皆でアフリカ人が演じるシェイクスピアのビデオを見たのですが、その時に、日本人にしかできないものがあると思ったんです。そこからアジア人であることを生かそうと思いました。」
そして、わざとアジア人のようなアクセントをつけて話したりすることもするようにしたり、授業中も堂々とディスカッションで発言できるようになった。

最後に読者へのメッセージをお願いすると。。。。。
「留学したい、NICに来たいと思ったのであれば、いいところまで来ているということだと思います(笑)。それは、自分が本当にやりたいことだとか、真剣にやりたいことを考え始めたということだと思います。皆さんにとって一番怖いことは「自分の本当の気持ちに向き合うこと」なのではないでしょうか。私は、NICの入試の面接で自分の気持ちを話した瞬間泣き出してしまいました。心から話す、というのは、真剣に努力するとか、心から楽しむということにもつながると思います。「面倒くさいことを考えることをやめない」それが一番大事だと思います。」

演劇やコンサートでつかわれるホール内で写真撮影をするために、警備員に使用許可を求めた。もちろんすべて英語で交渉したゆきさんの英語は、ヨークシャーなまりのネイティブそのものだった。