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同窓生インタビュー
<2004年秋>
阪部昇太さん NIC第13期生 奈良県立郡山高校出身
カリフォルニア大学ロサンゼルス校政治学部
学んでいるのは学問よりも価値観
〜世の中に「絶対」は「絶対」ない。
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◆世の中に知らないことがあるまま死にたくないんです
奈良出身の阪部さんは高校時代までは教師になることを考えていた。 「両親ともに教師なんです。だから普通に私も将来は教師になるんだと考えてました。でも、あるときふと『もっと世界を広げたい』と思ったんです。田舎で育ったので世の中が狭かったんですけど、それに加えて両親が教師だから、私の担任の先生とかも最初から私のことを知っている。しかも同級生に両親の教え子までいたりする…。誰も私のことを知らないところに行きたくなったんです。」 地方の教師の子供なら、おそらく誰もが感じるこの感覚…。 阪部さんはとにかく色んな場所に行き、色んな人に会いたいと思った。 「世の中に知らないことがあるまま死にたくないと思うようになっていた、ちょうどそんなとき、受験雑誌でNICを見つけたんです。海外進学もアリだなと、そのとき初めて思いました。いきなり行くのではなく、1年間東京で準備するというのも気に入りましたね。」 まずはディアブロバレーカレッジ(DVC)に進んだ阪部さんは、勉学に励む傍ら、野球やサッカー・チームにも入部し、文武両道の生活を送る。そして03年9月からUCLAに編入してきた。
◆きっかけは「信長の野望」
「政治学部なんですけど、もともとは歴史に興味があったんです。」 そのきっかけは子供の頃にはまったゲーム「信長の野望」だった。 「登場人物の名前で知らないのが出てくると、調べずにはいられなくて…。父の書斎から歴史の本を取り出してきては読んでましたね。そのうち『三国志』も読み始めて、英雄・悪役の共通点とかも見えてくるようになって『自分はこうありたい』とか『こうあってはならない』とか、色んなことを考えるようになりました。」 そうして、昔の人がどう考え行動したか、国が滅びるときというのはどんなときだったのか、むかしの社会の仕組みはどうだったのか、といったことを学んでいくうちに、今の政治にも興味を持つようになる。 「徐々に歴史を『流れ』で見るようになって来ましたね。歴史は繰り返すので、昔の出来事を現代に当てはめてみたりもして…。歴史学が過去を学ぶことだとすると、政治学はその過去を生かすことだと思うんです。また社会の仕組みなど、世の中のあらゆることが含まれているのが政治学。だから専攻にしました。」
◆価値観を学ぶ
そしてUCLAでは、西洋の価値観を学ぶことを念頭に置いたクラス選びをしている。 「ポスト・コミュニズムのロシア政治とか、アメリカ大統領制度とか、日本と全然関係のないものを取っています。西洋人と話が合わないのは、彼らの歴史的バックグラウンドを知らないからだと思うんです。だからウェスタン・ポリティックスを学ぶことで、その知識を得ながら、歴史と政治の比較、アジア的価値観との成り立ちの違いなどを学ぼうと思っています。」 もともと議論好きな阪部さんは、他人の考えを聞くことで多種多様な価値観を学ぶ。 「日本のように一つの価値観が圧倒的に支配する社会にいると、あることが『絶対』になってしまう怖さがあると思うんですよ。絶対のものは『絶対』ないのに(笑)。」 だからアメリカに来て学んでいる最大のものは色んな人の「価値観」であるという。 「でも、他人の価値観にはあまり左右はされませんよ。本を買うにしても、ベストセラーじゃなくて、1時間ぐらいかけてじっくり本屋の中をまわって面白そうなものを買うのが好きなんです。いいものは人それぞれですからね。」
◆将来は政治家、学校づくり、…
将来はまだ色んな道を模索しているところだという阪部さん。 「本当にやりたい仕事というのはまだ見つかってはいないです。でもどんな仕事でも学ぶことはあると思うし、時間がかかっても自分が活かせる仕事を見つけたい。あと自分にしか出来ないこともやりたいですね。『俺にはコレがある』というものを持って、一文無しになってもまた一からやり直せる自分を目指します。」 だから、かつての教師になることもまだオプションとしてはある。 「色んな経験をして、その経験をもとに色んな話をしながら教えることの出来る教師。それが理想です。世界は広いんだ、色んな価値観があるんだ、ということは詰め込むことは出来ない。でも自らの体験を語って聞かせることで伝えることは出来ますからね。」 最後にこう言った。 「将来は政治家も目指したいし、学校を作ってもみたい。それは結局は全部、日本のためになること。だからその土台作りのためにも、まずはもっと多くの日本人にこっちに来て欲しい。いろんな価値観を学んで欲しいですね。」 それは自らの体験をもとにした後輩への熱いメッセージだった。
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