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同窓生インタビュー
<2004年秋>
山田乃理子さん NIC第13期生 栃木県立女子高等学校出身
ニューヨーク市立大学ジョン・ジェイ・カレッジ犯罪心理学専攻
留学には明確な目的が必要って言いますけど、
その明確な目的を見つけるために留学したっていいんだと思います。
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「犯罪をなくすには、家庭を良くするのが一番なんです。最も身近な環境を良くすれば、社会も良くなって犯罪も減ると思うから。」 紅葉も終わり、冬の気配を感じさせる11月のニューヨーク。セントラルパークのすぐそばのスターバックスにその日の授業を終えて駆けつけた山田乃理子さんは、そう力説した。現在、ニューヨーク市立大学ジョン・ジェイ・カレッジで犯罪心理学を学び、将来はFBIの犯罪心理捜査官を目指して奮闘中の山田さん。渡米するまでは「なんとなく留学」だったと笑いながら、過去・現在・未来について色々語っていただきました。
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留学には明確な目的が必要って言いますけど、その明確な目的を見つけるために留学したっていいんだと思います。
「留学でもしてみたら?」 きっかけは母のその一言でした。 高校時代はあまり勉強が好きではなくて、大学受験なんて考えてなかったんです。学校はいわゆる進学校で、周りはみんな受験勉強に明け暮れていました。でも私は人から言われて何かをやるのではなく自分で選んだことをしたいという気持ちが強かったし、何のために大学に行くのかわからなかった。英語は好きだったけど、好きと出来るのとは別で、成績はあまりよくなかったですね・・・。ただアメリカのオープンな印象には憧れを持っていて、海外志向はあったかもしれません。それで、この母の一言で「やってみようかなあ」と思ったのかな。普通、親は子供の留学に反対するみたいですが、うちの場合は違いましたね。母も私も海外なんて行ったことがなかったのに・・・(笑)。
スタートがそんな感じでしたから、当然ながら「留学してこれを勉強しよう」みたいな明確な目的意識はありませんでした。「行って駄目ならいいや」ぐらいの気持ちでしたね。親も同じで、駄目だったら帰ってくればいいみたいな感じでした。
NICを選んだのも自然の流れで、いろいろパンフレットを読んだりすると他のところはみんなビジネスっぽかったんですが、NICは違っていて、なにか私と同じような人が集まっている印象を持ったんです。英語が出来るのではなく、何か夢を持っていて、その実現のファースト・ステップのためにNICで英語を学ぶみたいな。私にも出来るって思いました。かなり低いクラスから始まりましたが、それが自分のレベルに合っていて、すごく良かったと思います。
結局、渡米するまで、これといった目的もみつからないままでしたけど、今考えると、それはそれでいいんだと思います。明確な目的意識を持って日本の大学に進学する人なんて数えるほどしかいないですよね?留学だって別に同じでいいと思います。専攻を自由に変えられるのもアメリカの大学の特徴なので・・・。
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そんな目的意識もないままに渡米した山田さんは、今ではFBI犯罪心理捜査官になって世の中に貢献したいという明確なゴールを設定しています。おそらくこんなことをゴールにしている日本人は5本の指で余る程度のはず。もしかしたら山田さん一人だけかもしれません。何が彼女にそんな高いゴールを設定させたのでしょうか?
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アメリカに来てわかった社会の病理。むかし持った犯罪心理学への興味が心の中でむくむくと頭をもたげてきた。
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渡米して最初に行ったのはニューヨーク州立大学のMVCC(モホーク・ヴァレー短大)です。もともと演劇が好きで、ニューヨークに行けばブロードウェイでたくさん見られると思ってニューヨークを選んだのですが、ユーチカは遠かった・・・(笑)。ニューヨーク市まで車で5〜6時間もかかるなんて思ってませんでした。しかも最初はクラスの登録の仕方もわからないし、慣れてきた頃には大雪は降るし・・・。あれーっていう感じでした。でも自分で何もかもやらなくてはならない環境に置かれたことで、凄く成長したと思います。それまではいつも周りの人に頼ってばかりで、何も自分でしていなかったことに気付きました。それで色々考えるようになって、ちゃんと目的を持って勉強しようと思っていた頃に犯罪法学のクラスを取ったんです。これで目覚めました。逮捕された後のプロセスとか犯罪の分類方法とか、警察、弁護士、裁判所、刑務所の仕事や仕組みなどの基本的な勉強だったのですが、これだ!と思ったんです。 |
「羊達の沈黙」っていう映画がありましたよね。ジョディー・フォスターが演じるFBI訓練生官が、獄中の殺人鬼と面会し、殺人犯の心理データを取るという。あれで犯罪心理学に興味を持って、その後、ロバート・レスラーの「FBI犯罪心理捜査官」という本を読んでますますその世界にはまってはいたんです。でもその当時は「自分も犯罪心理捜査官になろう」とまでは思っていませんでした。
でもこっちに来てから出来た友人の多くが何かしら問題を抱えていることに気付いたんです。ドラッグをやめられない、やめさせられない。家庭内暴力(ドメスティック・ヴァイオレンス)がある。そんなことを知って、これは何か起こってから対処するのではなく、起こる前に何かしなければならないと思い始めました。そしてそれは社会で何かをするよりも、最も身近な家庭内の問題を解決していくしかないんだと。そんなことをもっと深く追求するために、犯罪心理学を学ぼうと志すようになりました。むかし感じた興味と、現実にやりたいこととの接点がここに生まれたんです。
無理だって人に笑われる。でも私がやりたいんだから、いいじゃない!
今年の9月から、このジョン・ジェイ・カレッジに編入してきました。ここは犯罪法学専門の大学で、11000人の学生がいます。警察官とか消防士もたくさん学びに来ています。本当はForensic
Science(科学捜査)を専攻したかったんですが学費が高いので、犯罪心理学にしました。まだ初歩的なクラスしか取っていないので何ともいえないのですが、これから専門分野を学んでいくので楽しみですね。
将来はとにかく犯罪に関る仕事をするつもりです。 まずはグリーンカードを取得して、6年間働く。そうしたら市民権を申請する資格が得られるから、申請して取得して、NYPD(ニューヨーク市警)で経験を積んだ後、FBIに入るんです。
NYPDまではみんな「頑張って」と言ってくれる。でもFBIというと周りはみんな笑う。「そんなFBIなんて頭のいい人がなるもんでしょ?あなたには無理よ」なんて言います。でも、私は本気です。可能性がゼロではないんだから。
こっちに来てから私は人にあまり頼らなくなりました。日本にいた頃は何かあると「誰かがやってくれるだろう」という甘い気持ちでいました。でもそれはここでは通用しません。だから今では何かやりたいことがあると「どうすれば出来るんだろう」と考えるようになりました。
FBIだって同じで、昔だったら無理と言われた時点で「ああ、そうなんだ」とあきらめていたと思います。でも今は「どうやったらなれるんだろう」と必死に考えている自分がいるんです。成長したと思います。
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留学はゴールではない。ひとにとって大事なのは「自分で決める」ということ。でも選択をするためには十分な情報が必要なことも事実。だから山田さんは個人個人の置かれる環境に注目する。
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自分の子供が日本の大学に行くって行ったら、それはそれでいい。自分で決めることが大事だから。でも、選択するために必要な環境は与えてあげたい。
留学してよかったと思います。何でも自分でやるようになったし、自分の頭で考えるようになったから。でも留学すれば万事上手く行くということではないと思います。大事なのは自分で決めたかどうかということ。もし将来、私の子供が日本の大学に行くと言ったら、それはそれでいいと思います。別に留学を強制するつもりはないです。ただ、そこに至るまでの過程というか、環境を整えて、正しい選択が出来るようにはしてあげたいと思います。
犯罪法学も同じで、ひとの行動の土台には、その人が置かれている環境の影響が凄く大きいと感じています。だから、その環境、なかでも最も身近な「家庭」という環境を良くしていくことで、その「家庭」の集合体である社会が良くなっていくんだと思っています。そんなことをもっと深く考えていきたいです。
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インタビューの最中、山田さんの口から何度も出てきた言葉。それは「人に頼ってはいけない」ということ。でも「人に頼られる」存在であるFBI捜査官を目指す山田さんは、「甘える」のと「頼る」ということの違いを直感的に理解されているようでした。大人になっても甘えた人間が多い日本社会。山田さんのような自立した人間がもっと出てくるためには、やはり外に出ていろんな経験を積むことが必要なんだと改めて実感しました。日本にいては自立は難しいかもしれません。若者よ、海外に出よう!
John Jay
College of Criminal Justice, CUNY
ジョン・ジェイ・カレッジ・オブ・クリミナル・ジャスティス 445 West 59th St. New York, NY
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