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同窓生インタビュー
<2005年>
渡辺智さん NIC第15期生 神奈川県立茅ヶ崎北陵高校出身 キングストン大学イラストレーション学部
お茶目キャラは、どんよりしたイギリスの曇り空をも吹っ飛ばす!
〜人生は一度っきり。明るく生きようぜ! |
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◆泣きながら「自信をなくした・・・」
「私、ちょうど壁にぶつかってたところだったんですよ。」 開口一番、そう話し出した渡辺さん。およそ何かに落ち込むようなタイプには見えないが・・・。 「専攻はイラストレーションなんですけど、みんなすごく上手いんです。クラスでは実力がないと注目されない。ちょっと前までは愛嬌で通ってたりしたんですけどね。」 時間をかけても、いい作品ができない。そんな自分に苛立ちを覚え、授業中に泣き出してしまったこともあったという。 「どうやっても上手くいかなかったとき、先生に声をかけられたんです。『大丈夫、大丈夫!』って言ったものの見破られたらしくて、また『どうしたの?』って言われた瞬間、『もう自信をなくした・・・』という言葉が自然に口から出てきて涙が流れてきた。」 積もり積もったストレスが渡辺さんの自信喪失の原因となっていた。 「でもそのあとイギリス人の友達達が寄ってきて励ましてくれたんです。それ以来、悩んでてもしょうがないから、開き直るしかないと思いましたね。よく遊ぶようにしたし、英語が上手くできなくて笑われても気にしなくなった。『お前、日本に来たら逆に笑ってやる!』と思いながら・・・(笑)。」 開き直ることで元の自分に戻った渡辺さんは、「最近、強くなった」と感じている。
◆やるのは自分。誰のせいにもできない。
そんな渡辺さんだが、海外進学の道を選んだのは予備校の先輩の一言がきっかけだった。 「もともと理系で、数学とか建築アートに興味があったんです。それでそんな話を先輩としていたら、『じゃあ、ヨーロッパに行けば?』と言ってくれたんです。中学の頃から海外への漠然とした憧れはあったので、『そんな道もあるのか』と思って・・・。色々調べていると、友達の知人がNIC出身で、薦められたんです。」 毎日、茅ヶ崎の実家から通ったNICでは、放課後にライブラリーで友達といろんなことを喋ったり、新宿のデパート散策をしたりしたことが強く思い出に残っている。 「そういえばNICに入る前も入った後も、インタビュー集とかビデオとかよく読んだり見たりして、『私もやれば出来る!』という気になってました。でもあまり安易に考えちゃダメですよね。やるのは自分だし、努力するのも自分。結果は自分に返ってくる。誰のせいにもできない。」 よくインタビュー集などを読んで「この人は特別」とか「運が良かっただけじゃない?」とか言う人がいる。そう言うだけで何もしない人が多い。同じ土俵に上がろうとさえしない彼らは、初めから負けている。渡辺さんは同じ土俵の上に上がったうえで「安易に考えちゃダメ」と言うから説得力がある。
◆イギリスでアートを学ぶ意義
インタビューのために大学を訪問したとき、渡辺さんはちょうどライフ・ドローイングの最中だった。 「ヌードだから写真撮影とかダメですよ(笑)。最近はライフ・ドローイング以外では、2週間ごとにプロジェクトがあって発表する機会が多いですね。あと美術館に行ったり、アニメーションを学んだり・・・。」 また渡辺さんはイギリスでアートを学ぶ意義をこう話す。 「イギリスのアートは、グラフィックとファイン・アートの間にある感じですね。絵としても美しいし、デザインとしてもカッコいい。」 そして生活自体から学ぶことも多いという。 「雑誌にしても看板にしても、色使いとかデザインとかを見ているだけで勉強になります。お菓子の袋だって面白いものがたくさんある。あとイギリスは古いものがたくさんありますね。クラスでも、おばあちゃんの家にあった古い雑誌を持ってくる学生がいたりして・・・。」
◆何事も自分で見つけることが大事
渡辺さんにとってアートとは「自分で見つけるもの」だという。 「日本って、世界中から良いものを集める能力が凄いと思うんです。でも、だからこそ、海外のイメージが良すぎるものになってるような気がします。いいものは海外で自分で直接接して、自分で見つけていくものだと思います。」 そんな「自分で見つけるもの」はアートだけではなく、自分自身についても同じこと。壁にぶつかり乗り越えることで、新たな自分を発見する。 「私は成長したとは思うけど、変わってはいないです。愛嬌で売るキャラだってむかしから変わらない。でも、こっちに来て改めて感じることは『別に私は変わらなくていいし、変わる必要もない』ということ。みんなから面白がられる人間が私だから。」 「成長すること」と「変わること」は違う。末っ子でいつも両親と一緒にいた渡辺さんは海外進学を決めたとき、おばあちゃんから「あなたは母から離れられないでしょ?」と言われたという。でもいま、イギリスで一人で悩みながらも頑張っている。 「自信なくしたとしても、帰りたくても帰れない。途中で笑いながら帰るわけには行かないですからね。」 誰にも甘えられない環境。それは人が成長するのに欠かせない要素の一つである。
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