Interview

小林 紀代子

#5小林 紀代子さん

東洋医学博士

  • サウスベイロ大学 東洋医学博士South Baylo University in Doctor of Acupuncture and Oriental Medicine

NIC13期生

日本大学 芸術学部演劇学科卒業

小林 紀代子さんを
特別な人に
していることは?

“心も体も前へ!前へ!” のバリバリ精神

国語の先生、留学を決める。
〜長い17年の道のりの始まり〜

NICでの1年を含め、学生生活17年。

現在、アメリカのサウスベイロ大学で東洋医学分野の博士学位を習得しました。御年、77歳で現役の学生です。定年の60歳に高校教師を退職後、私は全く新しい人生をスタートすることになりしました。そのきっかけは、進路部でたまたま見かけた1冊のNICパンフレットでした。NICの夏期講習受講後、ここが私の夢を叶える本当の場所だと確信しましたので、13期生としてNIC入学を決意しました。(NIC受験は、二度目でようやく合格)

NICでは、授業中のグループ学習方法やパソコンの使い方など、いろいろなことを私よりもうんと若いクラスメイトから教えてもらいました。今、振り返って思うことは、NICの1年間は10年分の価値があるということ。世界のどこに行っても、NICほどの厳しさはないです。あの経験が、今でも私の糧となっていると思います。現在、少しの英語力とお金さえあれば、留学は簡単にできる時代になりました。でも、母国で仲間たちとハードな1年間を体験して、それぞれの志望先へと羽ばたいていくというNICの特別な過程は、短いながらも私の人生の中で計り知れない大きいものとなっています。

小林 紀代子さん
紀代子さんの声はとても元気で、大きい。おんとし77歳。© Kiyoko Kobayashi 2017

舞台演劇から医学の道へ転向!?

私自身、高校時代よりずっと舞台演劇の世界に魅了されており、日本大学芸術学部演劇学科に入学しました。将来は、舞台人になって活躍したいという夢を抱えていましたが、父の大反対にあい、教職という道を選びました。しかし退職後は、いつか米国で心理学や演劇療法などについて学ぶことができたらという強い希望を持っておりました。

しかし、私にはもう一つの本当の願いが実はありました。それは、医学の道を極めることです。第二次世界大戦で焦土化した故郷で、幼少期に母を失い、養女に出されました。精神的にも身体的にも傷ついていた私ですが、よく漢方によるお灸や道端に生えた薬草の煎じ薬で治していただいた記憶がありました。この体験から、いつかは東洋医学全般を学びたいとずっと密かに思っておりました。

2001年にNICを卒業して、医学を極めるという私の願いを叶えるため、アメリカのカルフォルニア州に渡航しました。2004年にサンタモニカカレッジを卒業後、サウスベイロ大学東洋医学部修士課程に編入することができました。

2011年に、修士課程を卒業後博士課程に進学。そして、2017年の5月に卒業することができました。サウスベイロ大学にて、東洋医学を勉強するにつれ、数千年の歴史を持つその奥深い伝統療法にどんどん魅了されていきました。人間の本来持っている自然治癒力と、天地自然から得られる薬剤や鍼灸を基調とする考えに共感しました。医学博士課程修了まで、本当に長い道のりでしたが、舞台演劇家の夢を諦め、教職を選び、そして医学の道にたどり着きました。

人生、本当にどうなるか分かりませんね。

小林 紀代子さん
NIC時代、”同期のみんながよってたかって助けてくれた”1年間。
留学時代、”教授がよってたかって助けてくれた”16年間。© Kiyoko Kobayashi 2017

老年学が日本を救う

ある時、インターネットでジェロントロジー-「老年学」についてのエッセイを見つけた時に、東洋医学の立場から、人間の誕生から生の終末までの全てを学ぶ、この”人間総合科学”という分野を勉学していこうと決意しました。私自身、おんとし77歳。社会では、立派な高齢者です。だからこそ、高齢者としての私の経験を生かすことが出来ます。また、日本全体が世界に先駆けて超高齢化社会を迎えようとしていますので、アメリカで生まれ発展してきたこの学問こそ、日本で研究され応用されるべきものと直感しました。近年の医学研究によりますと、成人の脳でも新たな細胞が生まれることが立証されたそうです。ということは、「いくつになっても脳は若返る」ということです。人間は、死ぬまで成長し続ける事ができるのですから、自立して健康に生活する高齢者による新しい社会貢献も可能であるということです。これから、この老年学という学問にトライして、東洋医学で学んだことを応用することができればと考えています。

現在、日本の医学部の教育プログラムとして「東洋医学」は確立されていません。私が想う医療の本当の姿は、西洋医学一辺倒ではなく、やはり東西両医学をバランス良く理解したものです。いつかは、教壇にたって学生に東西両方の考えをもった医学を教えることが出来たらと夢見る次第です。

2011年から、鍼灸試験に毎年2回挑戦し続けてきました。そして、2017年いまだに挑戦中です。私は、何事にも自分の年齢を理由に諦めません。

心も体も前へ、前へ!私の医学探求への旅は、まだ始まったばかりです。

小林 紀代子さん
サウスベイロ大学付属のクリニックにて、インターンシップを経験。
針灸や薬草などによる東洋医学の治療の研修をする。© Kiyoko Kobayashi 2017