Interview

川﨑美苗さん

#7川﨑 美苗さん

獣医師

シドニー大学獣医学部獣医学科卒業
University of Sydney Bachelor of Veterinary Science
(現在はDoctor of Veterinary Medicine)
大阪府・金光八尾高校出身
NIC 第18期生

What makes you so special?

あきらめない。

目標や夢に一直線に進むことが
できたらいいですけど、
そうはいかないですよね。

寄り道や回り道をして遠回りをしたり、
途中で上手くいかないことが
あったとしても、あきらめさえしなければ
絶対にたどり着けると思うんです。

あきらめないでいつか叶えば
それは挫折とは言わないですよね。

獣医師として

鳥取県の動物病院で主に小動物の診療をする獣医師をしています。もちろん、犬や猫に始まりウサギや小鳥、ハリネズミ等どんな小動物でも受け入れて治療を施しています。日々見たことも触れたこともないような小動物を診察したり重度の病を患った動物を治療したり、動物だけでなくその飼い主の方の人生も背負っているので責任は重大です。命を取り扱うお仕事は、教科書通りには決して行かないので精神的にも体力的にもハードです。でも、やっぱりやりがいがあるお仕事だと思います。

2012年の12月に卒業して、獣医師としての資格を取得し帰国。翌年日本の獣医師の資格も取得し、2014年の4月から獣医師として日本で働き始めました。ですから、獣医師となってから3年が経った状況です。大学時代はいつか大動物を専門とした獣医師に、と思っていたんです。でも日本で獣医師として活動すると決めた時に、日本の大動物の診療現場を訪ねてみたところ、自分がイメージする医療とはやや異なるものでした。そこで、小動物の臨床医という仕事を選びました。

シドニー大学の実習のクラスでたまたまカンボジアに行く機会をもらったのですが、その研究経験がとても面白かったんです。研究内容としては、家畜社会でありながら家畜に対しての病原菌に対するワクチンが全く浸透していないカンボジアに習慣化を促すプログラムだったんですが、近隣国も病原菌への対策がしっかりとされていないので地元の人々の生活を脅かす社会問題なんです。ワクチン接種の重要性を啓発し、ワクチンを打った家畜家と打っていない家畜家を比較し、ワクチン代を引いても将来的に家畜を残せることで財産としてどれだけ人々に残るかということを数字で証明しました。そうすることで、カンボジアの人々や政府に家畜に対する病原菌の問題に対する解決策、すなわちワクチンの価値を気づかせることができたんです。それをシドニー大学に帰って発表したら論文として公式に発表することになりました。あの経験が今でも忘れられず、生産現場のお仕事やJICAなどで働くことを今は考えています。

タイで開催された学会出席時。シドニー大学およびラオス・カンボジアの共同研究者と。© Minae Kawasaki 2016

あえて難しい道を選ぶ

獣医になろうと思ったのは、中学2年生の時です。動物のほとんどは人間よりも寿命が短いです。実際に、私が飼っていた動物が病気を患った時に自分で治してやりたいと心から思ったんです。でも、何が起こってるかさえ分からない。じゃあ、分かるようになるために勉強しようと思ったのがきっかけです。

中学3年生の時、高校受験が目前になって進路を迷っていた時に”ゆとり教育”の導入が決まったんです。大学では絶対に獣医学の勉強を、と決めていたので、高校では勉強が出来る環境を見つけなければならないと思っていました。ゆとりになれば、教科書の量も減るし、土日の学校通学も無くなるし。この波には乗ってはいけないと思いました。

日本の大学の獣医学のカリキュラムがあまり好きではなく、というのも知識の詰込み型で実習が極端に少ないことと、あまり卒業までに勉強が求められないこと。それに比べ、海外の大学は少人数制の実習がクラスごとに必須で、勉強もとてもハードなことを知っていました。そこから留学してチャレンジしてみたいなあと思っていたんです。

そんな高校2年生の時に、NICの夏期講習の広告をたまたま見て行きたい!と思いました。それで、当時の高校の先生に相談。”このNICの夏期講習に参加するので学校の夏期講習は休ませてください”ってお願いしたんです。で、案の定反対されました。その年は一旦諦めたんですが、高校3年の夏、またまたNIC夏期講習のお知らせが。これは!と思い、次は黙って高校の夏期講習を休みました(笑)。先生に反対されるのは当然分かっていたので。

© Minae Kawasaki 2016

誰かが引いたレールより、
自分のやりたいことをやる。

その夏期講習で出会ったのがダニー先生でした。ダニーの授業中、次の課題を口頭で指示されるんですが全く分からない。授業の内容もほとんど分からない。あるクラスメイトが”ダニーは聞き取りやすいけど、クリスティン(もう1人のオーストラリア人の先生)は訛りがあって全くわからないねー”って話していたんです。いや、訛りがあることさえも分からない!っていう感じで。”分からなかった”という言い方というか、言葉が違う人間にどんな風に伝えたらいいか分からなかったんですね。今では簡単に分かりますよね。”I do not know”とか”I did not understand”とか色々。でも、話せなかったんです。英語の読み書きは全く問題がないのに、聞いたり話したりが出来ない。そしたらダニーが”何が分からないか書いて僕のデスクに持ってきてくれたらいいよ”と提案してくれたんです。そこから夏期講習中ずっと面倒を見てくれました。

分からないなりに必死に夏期講習をやったんですけど、分からないなりに本当に楽しかったです。夏期講習の終わりにお世話になったダニーから一言。”自分の人生なんだからやりたいことをやったほうがいい!”と。そしてNIC入学を決断しました。高校の先生が引いたレールの上をただ歩くのではなく、自分が満足する方へ、幸せな方へと向かうことにしました。

大学の卒業式。友達と。© Minae Kawasaki 2016

動物を通じて「人間」を助けたい。

留学時代の6年間は”来ちゃったからには後戻りできない!”の一心で、勉強や海外での生活は大変なことも多々ありましたが、今思い返してみると本当に楽しかったです。シドニー大学での獣医の専門課程の5年間のプログラムでは、カナダ、アメリカ、アジア、イギリス、北欧、エジプトなど世界中の学生と勉強しました。海外の大学で獣医になるというのは簡単ではないことは当たり前で、特にテストは実践的な臨床に則した内容の問題を筆記で答えていくテストが2時間くらい等。最初の問題を間違えてしまえば、全部の答えが間違ってしまうんですよね。ただ知識を問う問題ではなく、診療の流れどおりにテストの問題も進んでいくので、自分でプロセスを考え判断していく力が必要なんです。

これからの夢は、なんらかの形で人もしくは人々の生活を助けられる人間になることです。今まで動物を助けたい一心で獣医になることが出来ましたが、獣医として働いてみると動物の裏にはいつも人という存在がいることに気づいたんです。今の仕事を通して、小動物を救うことでその飼い主の方々の生活を幸せにという夢は叶っているんですが、もっと人の生活に近いところ、例えば家畜などの病原菌や寄生虫、ワクチンの研究などで動物の健康を助けることでその裏の人を助けたいというか。まだまだ、はっきりとは分からないですが、諦めずに将来したいことを思い描き続けていればいつかきっと実現すると信じています。

大学5年目(最終学年)の病院実習時。大学付属大動物病院にて。© Minae Kawasaki 2016