Messages保護者・高校教員・本学OBOGからのメッセージ

所属する企業または学校名、肩書および氏名は、インタビュー当時のものです。

自分をじっくり見つめた進路選び

株式会社 毎日コミュニケーションズ石沢 穣 さん

大学と学生と企業の三者を見つめている立場から、アドバイスをいただけますか?

まず、留学ということについて。今日、留学というのは、とてもポピュラーになっています。かつて、それが相当に限られた人のためのものだったことを考えれば、隔世の感じがあります。しかし真剣に海外の大学で学びたいという人がいる一方で、「日本にいてもつまらないから、留学でもするか」という気分で行く人も増えています。

実際、夏休みに旅行がてらに行ける短期のものや、観光とほとんど変わらないような内容のものもあります。いわば、異文化に触れたというべきものでしょうか。この場合、例えば、就職の面接で「留学しました」と言っても、相手にアピールするものは少ないです。

また、日本の大学に入学して、在学中に1年間だけ留学して帰ってくるというのも、とても増えました。これは、それなりに学ぶところはあると思います。ただ、学ぶ内容や目的で言うと、やはり語学の習得が主になるでしょう。

これに対して、本格留学といわれるものは、語学はあくまでもコミュニケーションの道具であって、本来の目的は、宇宙工学であったり、国際政治学であったり、ジャーナリズムであったりと、専門性の習得を目指すところにあるのです。

このように、留学にも様々あります。留学を希望するのであれば、自分は何の目的で留学をしたいのか、その目的に合ったものを選ぶことが大切でしょう。

どうやって自分の目的をはっきりとさせればいいのでしょうか?

そこです。わずか18年という人生経験で、ごく狭い人間関係でしか生きていません。ですから、外にどんな世界があるのか、自分が何に向いていて、どうやって進路を選んだらいいのか、自分で見つけろといっても酷な部分はあります。

ただ、わからないなりに、自分で一生懸命考えること。そこに意味があるのです。人生の選択をする機会は、それまでに、そうはなかったでしょうから。

例えば、最近は日本の大学では、就職を控えた学生に自己分析をさせています。今までの人生を振り返り、どんなときに喜びや怒りを感じ、そのときどう行動したのかを考え抜き、そこから自分が何者であるかを浮かび上がらせるのです。一人だけでやっていると堂堂巡りになりますから、アドバイザーや友人、先輩などとの対話を通して分析をしていきます。

こうすることによって、自分は何をしたいのかが、おぼろげにも見えて、モチベーションが高まって、大学で、あるいは職場で、自分のすべきことがイメージづけられていくということです。

大学進学にあたっての指導といえば、受験指導というのが実際のところではないでしょうか。なぜ自分がそれを学ぶのかというモチベーションについては、取り組みはこれからではないでしょうか。

株式会社 毎日コミュニケーションズ

大学と学生と企業、これらの三者の間に立ってメディアを開発し、大学進学、就職情報のビジネスを展開している同社。時代とともに刻々と変化する学びと仕事を見つめている。

留学経験者が秘める力

パークハイアット東京 人事部長中谷 恵一 さん

留学経験者から感じられるのは、どのようなことでしょうか?

現場で多少の困難があっても、逃げ出したりしない、そんな強さです。彼らは異郷の地で、一人で生活し、日本にいてはまず経験することがなかったであろういろいろな不自由をし、それを乗り越えてきました。勉強では日々大量の文献を読まされ、レポートに追われ、意見を求められるという日々と戦ってきたのが留学生です。こうして鍛えられると、社会人になって仕事でも底力を見せてくれるんだなあと感じます。

パークハイアット東京ではNIC出身の方が複数勤務しています。みなさん、非常に前向きに仕事をしている方ばかりです。

留学といっても、ちょっとだけ海外を経験しました、お金は親に出してもらいましたというのでしたら、人を採る立場からすれば、あまり迫力は感じません。日本の学生にありがちな子供っぽさから抜けだせるのは、不慣れな土地で独立心を養ってこそだと思います。

ホテルにおいて、もっとも求められるものは、サービスに対する貢献です。例えば、お客様にお茶をお出しする仕事。これを単純でつまらないと感じたら、その人は適性がないということです。お茶を出すという同じことの繰り返しでも、お客様は常に変わるわけです。それを喜んでできなければ、たとえ英語の能力が高くても、その人はホテルの仕事に向いていないということです。一流国立大学を出ているからといって、優遇することはありません。その人自信が持っている力次第です。

留学することで得られるものは何だと思われますか?

留学することで一番大切なことの一つには、日本人としてのアイデンティティを自覚できるということです。自分は日本人であるという自覚と誇りをもつことで他の人種や文化を受け入れることができます。私たちのホテルをご利用いただくお客様は、様々な文化のバックグラウンドをお持ちです。私たちは、最高品質のサービスを、私たちの日本人の感性で提供してこそ、ご満足いただけるのだと考えています。

例えば、日本人特有のチームワークのよさというものがあります。それを発揮することによって、さらにいい成果が出せることでしょう。

日本人が本来持っている感性。それと留学によって伸ばした能力。これらが相乗効果となってサービス業に期待される人材となる。それが日本人の留学経験者のセールスポイントということができるのではないでしょうか。

パークハイアット東京

東京・新宿に立地し、国内の外資系ホテルのトップランクに位置。「客室の快適さ」と「レストラン」の評判は連続第1位を誇る。日本のホテル業界のリーダー的存在でもある。

留学で「後付けできないもの」の能力を高める

デロイトトーマツコンサルティング株式会社(現 アビームコンサルティング株式会社)人事部マネージャー林原 すわみ さん

アメリカの大学では何を学びましたか?

ソーシャルワークとITです。この2つは何の脈略もないように思えることでしょう。確かに、学んでいるときは、この仕事に就くためのこの勉強というような考えはしませんでした。力をつければ道は開けてくるだろうと漠然と思ってました。いえ、そもそも自分が何に向いているのか、わからなくて、留学して探そうとしていたのです。ソーシャルワークを選んだのも、せっかくの留学なんだから日本で学びにくいものがいいと考えたからです。

ソーシャルワーカーというのはカウンセリングをする専門家で、私はフィールドワークでホームレスの人に仕事を斡旋するということを経験しました。アメリカでは、このように実践的な学びができることが大きな特徴で、それによって、私自身は自分が学びたいことがクリアになっていき、とてもよかったですね。

現在は、企業の人材活用、採用の戦略立案などの仕事に携わっています。今日、採用にはインターネットは欠かせません。

つながりがないと思われたソーシャルワークとITがまさに1つになった仕事です。

NICの1年間は、いかがでしたか?

人生でいちばん楽しかった時間。振り返ってみると、そう思います。それまで、高校生活は興味が持てるようなものではなく、友だちとの会話といえば、TVでタレントがどうしたとか、そんなことばかり。「留学したい」という気持ちは高1の時からありました。

高校を卒業してすぐに留学せずにNICに入学したのは、母の勧めからでした。アメリカで「学ぶ」「暮らす」の両立は大変だから、1年間、日本で準備しなさい、と。1年で留学できるレベルにするというNICのはっきりした姿勢も、私はいいと思いました。

そしてNICでの勉強が始まったら、私にとって、留学準備期間というより、NICライフそのものに熱中しました。目的意識がはっきりとしている仲間とともに学べたことが、、よかったのだと思います。

留学というと、語学や専門知識などのスキルを身につけるものと思っている人も多いと思いますが、私は、それよりもポテンシャル、後付けできないものの能力を高める機会だと思います。自分で問題解決ができ、ポジティブに考えていける人になるということですね。今、採用する立場になって、ますますそういう思いを強めています。

プロフィール

1989年にNIC入学。1994年にケンタッキー州スポルディング大学社会学部卒業。在米日系企業の社長直下部署で、人事、組織再編プロジェクトなどに従事。1997年帰国、ITを使った採用のための商品開発に携わった後、現在の職場に移る。

夢をかなえる進路とは

國學院高等学校(東京都)教諭幸松 世剛 先生

世界は、ずっと近くにある

高校生にとって、世界は、大人が考えているよりも、ずっと近くにある。彼らを見ていると、そういうことを感じることがあります。

例えば、日本のサッカー選手が、記者会見などで英語やイタリア語を使ってインタビューに応えているのをテレビなどで見たりして、世界で活躍することのイメージが、我々の世代よりも、はっきりとしているように思えるのです。

ある日、3年生になったばかりの生徒が、「先生、ぼく、オーストラリアで働きたいと思ってるんです」と相談に来ました。

私は、テレビ番組の影響かな、ぐらいに思ったのですが、話を聞いてみると、しっかりとビジョンを持っていて、人生設計を語り始めたのです。

そうか、そこまで考えているんだと思い、実現に向けて準備をするための具体的なアドバイスをしたのです。

答えに悩む、生徒からの進路相談

一方で、答えに困るような進路相談もあります。
「将来、英語が使えるようになりたいんです。どこの大学を目指せばいいですか」という質問です。どういう進路を薦めるべきか、案外悩まされます。

私が悩む第一の理由は、その生徒が何をしようとしているのか見えないからです。生徒自信が漠然としか、わかっていないのです。

英語を志望する生徒の動機は、たいてい英語が好きだから、もっと学びたい。あるいは、好きな英語で仕事がしたい。さらには、英語を駆使して世界で活躍したい。というのですが、単純に、英文科や英米文学科、あるいは外国語学部英語学科を薦めても、英文学を耽読したり、英語の言語学的アプローチをめざしたり、というのならともかく、おそらくそうではない生徒にとって、英米文学科に進んで、シェークスピアやヘミングウェーがとれほど彼らの期待に応えるのだろう、という躊躇があります。

これが、私が答えに困る第二の理由です。

日本の大学で英語といえば、当然かもしれませんが圧倒的に英文科が多い。私自身も英文科卒です。英語を学びたいという多様なニーズに、果たして応えられているのだろうか。学ぶ側と教える側が、ミスマッチになっているのではないか、ということです。

大人が世界を遠くしてしまっている

ならば、留学という道はどうか。もちろん、可能性として検討すべきです。しかし、これには、大人の方が、気持ちの上での垣根を取り払っていません。一般的には保護者の方も、教員も、できれば、日本の学校に行ってくれたほうが安心という気持ちを、漠然と持っているのではないでしょうか。

そう考えると、高校生にとって世界は近いのに、大人が遠くしてしまっていることに気づきます。このギャップを埋めるような機関に出会えれば、それは、とても幸いなことだと思います。

しっかりと目標を持つということ

福岡雙葉高等学校 進路指導主任白土 祥一 先生

実りをもたらすには、相応の心構えを

本校は、国際交流プログラムに力を入れており、中学から海外の姉妹校で学ぶ機会を設け、比較的多くの生徒が参加をしています。

中学、高校段階での海外での学びは、異文化に触れたり、英語などを集中的に学んだりというものが一般的な内容になっています。これは本格的な留学ではありませんが、ここでの経験がその生徒の中に大きく残り、卒業後の進路決定に重要な位置を占めるようになる場合が少なくありません。

一方、高校を卒業して本格的な留学をする場合、目的は、それぞれ本人次第ということになります。理系の勉強がしたくてアイルランドに行った卒業生もいれば、福祉を本場の北欧で学びたいと、スウェーデンに留学した卒業生もいて、それぞれ元気に学生生活を送っているようです。

私たち教員は、こうした留学志望の生徒たちには、できるだけ的確なアドバイスをして、留学を実りあるものにして欲しいと願っています。私の場合は、目標をはっきりとさせるようにと指導をしています。

「目標がはっきりしないのであれば、留学は止めなさい」とまで言いきります。目標を持つことはとても重要だと思うからです。私が生徒に伝えたいことは、「何となく行ってみたい」といった曖昧な動機では、何となく過ごして終わってしまい、得られるものも少ないだろうということです。

もっとも、目標を持つといっても、そう、はっきりとやりたいことが決まっている子は、多くはありません。ですから、初めは「何となく」という、漠然とした憧れのような気持ちからスタートするのでしょう。その芽は摘んではいけません。大切なのはその後です。その芽を大きく伸ばし、実りをもたらすには、相応の心構えが必要だということです。

例えば、どういう学びのコースがあるのか、しっかりと調べさせます。そして自分は何を学ぶのか、それを決めた理由は何か、ホームステイの受け入れについてはどうなっているのか、などをきちんと保護者の方や私たち教員に説明ができるようにしなさいと求めます。そういうことを通して、本人も、しっかりとした意識を持って、留学に臨むようになっていきます。周りがお膳立てをしなければ物事が進まないようなら、やめるべきで、そんなことでは、留学してもうまくいかないからです。

できる準備は、なるべく事前に

本人の環境順応力によりますが、海外で成功するかどうかを、事前に見極めるのは簡単ではないと思います。引っ込み思案だと思っていた子が、めきめきと成長する例もありますし、その逆の場合もありますから。

できる準備は、なるべく事前にするに越したことはないでしょう。その方が、後悔も少ないでしょう。ですから、備えあれば、憂いなしということは、言えるかもしれません。