先輩からのメッセージ

海外大学のシステムが自分に合っていた英語を使う仕事につきたいとか、なかったです。

PROFILE

田口潤子さん

NIC 第13期生 秋田県立秋田北高校出身
エセックス大学コンピュータ・サイエンス学部

「やりたいことが語れない」ことに気づいた高1の終り頃

未来都市とは程遠い豊かな自然に囲まれたエセックス大学で人工知能について学ぶ田口さんが海外進学を考え始めたのは高1の終りの頃だった。
「NICのパンフレットを学校で見たんです。入学時に専攻を決める必要がない海外の大学システムのことを知って惹かれたんです。当時の私は、やりたいことを語ることが出来ないことに気づいて・・・。大学に入ってから色んな分野を学びながら、専攻を決めていけるというのは本当にいいシステムだと思いましたよ。」

もともと英語には興味があったものの、「別に英語を使う仕事につきたいとか、そんなのではなかった」という田口さん。
人工知能に興味を持ったのは、心理学とパソコンの2つとの出会いがきっかけだった。

自分への興味

「高校時代からなんですけど、人の心理状況に興味が湧いてきたんです。人といっても他人ではなくて自分です。たとえば、あることを考えているときに『こんなことを考えている人はほかにもいるのか?』とか考えながら自己分析したり・・・。」
そして図書館でいろいろと本を読み漁っていくうちに、日本よりアメリカのほうが心理学が進んでいることを知る。海外で心理学を専攻する学生は少なくなく、その多くは「カウンセラーになりたい」と口にする。でも田口さんは違う。
「他人に興味があるのではなくて自分に興味があるわけだから、カウンセラー的な考え方じゃないんです。人の体験談を聞いても、『自分だったらどうしただろう?』って考える方なので・・・。私はただ単に自分の知りたいことを知りたいだけで、将来の仕事に結び付けて考えたことはないですね。」
もう一つの出会いがパソコン。NIC入学時に親に買ってもらい、ハマった。
「人間(生物)じゃないものが意思を持ったらどうなるんだろうと考えるようになって、また図書館に行ったりインターネットで調べていくうちに、人工知能という学問に出会ったんです。プログラミングで人間がすべてを決めるのではなく、プログラム自体が考えて動く。それが面白いと思ったんですね。」

イギリスで初めての共同生活

「興味があるのは自分」と言う田口さんだが、他人とコミュニケーションを取らないわけではもちろんない。イギリスに来て、家庭以外で初めての共同生活も楽しんだ。
「寮にいると友達と仲良くなりますよね。ご飯を一緒に食べることも多い。帰っても必ず誰かがいる感覚が心地いいんですよ。カンタベリーにいたときは一度キッチンのガスを止められたことがあるんです。ひどく汚しちゃう人とかいたので・・・。でもガスコンロを買ってきた友達がいて、一緒に料理してました(笑)。」
 エセックス大学に来てからも、大学近くの会社でデータベース入力のアルバイトをしながら学生生活を満喫している。

将来のことはこれからじっくり考える

そんな中、05年6月に卒業を控え、将来どうするかに頭を悩ませる日々が続いていると言う田口さん。
「教授からは『ここの大学院に残って研究を続けない?』と誘われて入るんですけど、そこまで興味がないというのが本心なんです。」
昨年夏休みには一時帰国し、コンピューター関連の会社に面接にも行った。そのうち1社は好感触で、次回の面接時に自分が組んだプログラム、自己分析、自身で読んで勉強した本の感想をレポート形式にまとめて提出することになっている。
「でもプログラマーとかシステム・エンジニアになりたいわけでもないなと思っていて、まだ『やりたいこと』が見つからないんです。祖母がお茶とかお花の先生をしているので、卒業後は帰国してそういう日本文化的なものを身につけながら、将来のことをじっくり考えていこうかなあと思っています。」
20代前半で確固とした「やりたいこと」と出会う人は少数派。でも、だからといって何もしない人と、何かをしながら「やりたいこと」を見つけようとする人との間には、想像以上のギャップが生まれてくる。見つけようとしない限り、何も見つかるわけはないのだから・・・。