先輩からのメッセージ

夢追人

PROFILE

入口真夕子さん

NIC 第14期生 私立品川女子学院高校出身
リバプール大学考古学部

「エジプトでお墓を発見したいんです。」 すでに日が落ちたリバプールの小さなパブで、そんな夢をとつとつと語る・・・。とにかく考古学者になるのが当面の目標という入口さんに、今考えていることを語ってもらいました。

「逃げて帰ってくるようなら日本に帰ってこなくていい」

ファウンデーション・コースを終えてここに来てからまだ4ヶ月です。最初はそれまでいたカンタベリーか日本に帰りたかったですよ。だって寮にはイギリス人しかいない・・・。本当に話すのも怖かったんですよ。もともと大人しい性格なので、積極的に話しかけられるわけもなく・・・。でも両親に電話しても「とにかく頑張れ!」と・・・。そしてさらには「逃げて帰ってくるようなら日本に帰ってこなくていい」とまで・・・。帰りたいけど帰れない。私には逃げる場所はないんだって思いました。
学部にはアジア人が私一人だけなんです。意識しすぎなのかもしれませんけど、目立ってるというか・・・。
最近はようやく慣れてきたので、もう大丈夫ですけどね。逆にアジア人というか日本人として頑張らなきゃというような、日本人としての誇りも芽生えてきたような気がします。

吉村作治教授に憧れたのが、考古学を専攻するきっかけでした。

ここリバプール大学では考古学を専攻しています。考古学を学べる大学はイギリスでも限られているんですけど、ここは特にエジプト考古学で有名なんですよ。
もともと考古学に興味を持ったのは小学校後半から中1にかけての頃。母がエジプト考古学の本を持っていて、それを読んだというか「眺めた」のがきっかけですね。たった一冊だけでしたけど、何かこうすごく惹かれるものがあったんです。写真がたくさんあって、特にピラミッドにいい意味で大きなショックを受けました。その時はまだ考古学という言葉さえ知りませんでしたけど・・・。でも、その本との出会いがきっかけでテレビでも「世界ふしぎ発見!」とか考古学に関する番組を見たりするようになったんです。そういえば、有名な吉村作治教授の講演会にも行きましたよ。高校に入ってすぐの頃だったかな・・・。憧れましたね。だから最初は吉村教授のいる早稲田大学に行こうと思って色々調べたんです。でも、吉村教授は別の学部にいることがわかったんです。ちょうど同じ頃、留学も考えていてNICの説明会にも参加したんです。まだ留学は選択肢の一つぐらいの感じでしたけどね。でも海外の方が考古学は進んでいるから、それから色々考えて留学しようと決めました。

とにかくまだ知られていないことを発見したい

もともとは進学先としてアメリカを考えていたんですけど、イギリスだと専門を3年間学べるとわかったので・・・。リバプール大学以外にいくつかインタビューには行きましたよ。でも、ここが一番最初に訪問したところで、すごく印象が良かったんですね。アジア人で目立つから教授も話しかけてきてくれて・・・。いま学部には30人の学生がいて留学生は3人。日本人は私だけです。女性が意外と多いですね。
日本だと考古学は文系の中にしかないんですけど、こっちでは文系と理系にも分かれているんです。環境学とか地質学とかサイエンスの知識も必要になってきますからね。奥が深いですよ。
考古学というのは、わからないことを発見して、それを調べていく勉強。このプロセスに面白さを感じるんです。色々調査をして答えを出していく。基本的に絶対の答えはないけど、サイエンスを利用して、どんどん詰めていくんです。
まだはっきりとエジプト考古学でもどの分野を研究したいか決めてはいませんが、とにかくすべての分野をまずは勉強してみたいです。将来は大学院まで行って考古学者になって、エジプトでお墓とか装飾品とか何でもいいから遺跡を発掘したいですね。古代の建築とかエジプトの宗教にも興味があるんですけど、とにかく何かまだ知られていないものを発見したいです。別に人類のためとかじゃなくて、ただ単純に自分の興味として・・・。
そういえば大英博物館にももう2回行きました。一度目はカンタンベリーのときのスクール・トリップで行ったんですけど・・・。やっぱり凄いですよね。私もとにかく早く何か見つけたい。考古学は地味な作業なので小さな発見ももちろん大切なのですが、やっぱりできるなら人生の中で大きな発見を1度でもしてみたいです。今までの考古学の常識を覆すような・・・。

留学で自分も発見

先学期は勉強に精一杯でした。レクチャーはまだ多くはないので自由な時間はあるんですけど、ずっと読書三昧でしたね・・・。友人を作る機会が少なかったので、今学期からはもっとソーシャル・ライフを楽しみたいです。スキューバ・ダイビングも始めようかと思っているところです。あと来年からはアラビア語も始めるつもりです。そして近いうちに必ずエジプトに行く・・・。
メリハリをつけることって大事だと思います。日本人はとにかく勤勉ですけど、イギリス人は遊ぶときは遊ぶ。勉強と遊びのメリハリがはっきりしているんです。リバプールでの生活はそんなにお金がかからないというか、お金は節約しています。食費なんて、外食しなければ、ほとんどかからないですしね。
考古学じゃないけど、こっちに来てから自分を発見するようになりました。客観的に物事を見るようになったからかもしれませんけど、自分の悪い面に気づくようになりましたね。あと友人とか両親のありがたみ・・・。応援してくれるし、お互いに色々苦労していることを話して、一緒に考えたり・・・。イギリスに来てよかったです。

好きなことを探求する喜び・・・。
資格がどうのこうのとか、将来の就職のためにはとか、いまの日本ではそういう判断基準で自分が本当に興味のあることに背を向ける人が多い。人生って、そんなもの?
考古学を勉強して、将来食っていけるのかという心配はあるかもしれない。でも、夢を追うことの素晴らしさは、そんな心配とは比較できない。それは入口さんを見ればよくわかる。夢を追うことで、人間的に成長していっているのだから・・・。